暑さと健康(2)熱中症について
子供の頃、ほとんどの方が「『日射病』になるから帽子をちゃんと被りなさい」、と言われたことがあるのではないでしょうか。また、夏は一層部活動に力が入る時期ですが、仲間が「熱射病」を起こして大変だった、という経験をされた方もいるかもしれません。たとえ野球部で、ちゃんと帽子を被っていても、です。
 熱射病や日射病は、名前は似ていますが、原因や重症度が違います。しかし、暑さ対策を上手に行わずに活動していて起こることや症状、基本的な対策がよく似ているので、まとめて熱中症といいます。
 普通想像するのは夏のスポーツか、炎天下での外出や草抜きといったシーンですが、そればかりではありません。溶鉱炉や焼却炉、ボイラー室など、火を使う作業場では一年中念頭に入れておく必要があります。
 あと、よくあるのはスポーツクラブのサウナ!エアロビや水泳(実は他の種目より発汗量は多いそうです)で汗をかいて、水分補給しないままサウナに入ればテキメンですよ!

 ★熱中症の分類★
 熱中症の分類は次の表の通り。中でも、熱射病は命にかかわるということを覚えておきましょう。

熱けいれん 日射病 熱疲労 熱射病
原因 汗をかいても水だけ飲んで塩分をとらずにいて、筋肉がひきつりやすくなり手足や腹部にこむらがえり(「手足がつる」こと)が起きる 頭が熱くて皮膚に「血がのぼり」(皮膚の血管が拡張し)、ここに血液をとられるため脳や内臓、手足が貧血状態に 汗をかいても水分補給をせずに、体内の水分が不足
脱水状態 汗もかけなくなり熱で臓器や中枢が故障、重篤
症状 体温 正常〜やや高め 正常〜やや高め 正常〜やや高め 高熱、40℃以上にも
血圧 正常 低下 低下  
正常 速くて弱い脈 速くて弱い脈 速くて弱い脈or不整脈
意識状態 正常 正常〜もうろう、時に失神 正常〜もうろう、時に失神 おかしな言動〜もうろう、昏睡まで様々。正常な場合もないとは限らないので注意。
皮膚の色 正常 青白い 青白い 赤く紅潮
発汗 大量にかいた後 気温に相応、または冷汗 大量〜重いほど少なくなる なくなる
頭痛・めまい・吐き気 意識があれば激しい
のどの渇き 強い 意識があれば激しい
呼吸 正常 正常〜浅く速い 正常〜浅く速い 浅く速い
全身の筋肉 手足がこむらがえりを起こし痛い だるい、脱力感 だるい、脱力感 脱力。体が震えていることも。
備考     悪化すれば熱射病に 死亡することも。集中治療室のある病院へ!

 ★熱中症を「予防する」ための対策★
日本体育協会が出している熱中症の予防対策をまとめると、
 @休憩をきちんととり、水分塩分を上手に補給する
 A体調の悪いときや、あまりにも気温が高い時にはスポーツや作業を控える
 B適切な服装や帽子を使う
 C応急処置できる準備をしてからスポーツや作業に臨む

 ということになります。特に@とCについては、従業員の方や生徒の皆さんからは言い出しにくいもの。
 暑い場所での業務の責任者や学校の先生、運動部のキャプテンなどは責任重大ですよ!!

 @水分と塩分を上手に補給する
 「乾いたな」と思う前に補うことが大切です。乾きを感じたときには心拍数が上り始めているはずです。これは既に脱水がきている証拠です。

 ・飲む量とタイミングの目安は
 運動を始める30分前に250〜500ml程度を数回に分けて。そして運動中は15〜30分毎に休憩を兼ねて一口〜200ml程度ずつ。そして終了後は就寝前までに体重減少分を少しずつとるといいようです。運動後に多量に飲む方がいますが、吸収率も低い上、食欲が落ちます。
 運動中は、水分補給タイムを設けて強制的に飲ませる方法と、個人の好きなときに飲む方法がありますが、後者だけでは引っ込み思案の方、きまじめな方では、さぼっていると思われないかとやせがまんしてみせたり、なんとなく雰囲気的に飲みづらい、などということが起きやすいので、却って危険です。強制的に飲ませる方法なら、皆と一緒なので気がねなく飲めますし、適切な頻度で休憩をとるため、作業責任者やコーチが進捗状況やペースを調節しやすいのでおすすめです。
 一斉の水分補給タイムを設け、かつ個人の好きなときにも飲むことができればベストですが、片方しか採用できないのならば、強制的に飲ませる方法が無難でしょう。

 ・飲むものは
 熱中症でなければ、常温でも冷やしたものでもOK。
 1時間程度の軽い室内運動なら水道水でもOKですが、長時間の場合や汗をよくかく場合は、水だけでは吸収が悪くなります。水分は腸や腎臓で、体に必要な電解質(塩分)や糖分を取り込む時に、一緒に入り込むことで吸収されるからです。回復を早くし、また熱けいれんを起こさないためにも、汗で失われるために体が欲している塩分を一緒に摂ることが大切です。さらに、糖分を3〜5%含んだ方がただの塩水よりも飲みやすく、回復が早いことが知られています。そのように調整したものがスポーツドリンク。疾患がない方なら、熱中症でなければ半分に薄めたものでも、通常の濃度でもOKです。但し、人工甘味料を多く使用したものでは、摂りすぎると下痢などの症状がでることがあります。多量に飲むことが考えられる運動時には、避けた方が無難でしょう。炭酸飲料や、甘すぎる飲み物はおすすめできません。予算的に難しければ、水と一緒に食塩を少しなめるのも手です。

 A体調の悪いときや、あまりにも気温が高い時にはスポーツや作業を避ける
気温と体調による注意事項について、日本体育協会の「熱中症予防のための運動指針」を参考に、まとめてみました。厳密には湿度等も加味しますが、ここでは通常の温度計の気温での目安を示します。

 ・31〜35℃:熱中症の危険が非常に高い
  体力の低い方、暑さに不慣れな方、体調不良の方は、中止すべきです。激しい運動や持久走など熱の出やすい運動は慣れた方も避けましょう。スポーツや作業をする場合は、15〜20分毎に休憩と水分補給を行わなければなりません。
 ・28〜31℃:熱中症の危険が急に増す気温です
  積極的な休憩と水分摂取が必要です。とくにスポーツや作業の前後と、20〜30分毎の水分摂取は必須です。
 ・24〜28℃:熱中症による死亡事故が起きないとは限りません
  熱中症の兆候に注意しながら、水分摂取と休息を十分に行いましょう。
 ・24℃まで:通常は熱中症の危険性は小さいのですが..
 市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意が必要です。

 日常の体調管理については、夏は強化練習や合宿をしたり、屋外での作業日数を増やしたりして運動量が増えがちです。でも、水分のとり過ぎ、睡眠不足などともあいまって、体調は落ちています(夏ばて参照)。
 運動も「負荷」の一つです。度がすぎれば、スポーツマンといえど体調が悪くなります。ひどいと「オーパートレーニング症候群」といって、疲労が蓄積されて自律神経系の調子が崩れ、発熱や頭痛、めまい、生理が止まるなどの様々な症状が出るほか、熱中症のリスクも高くなります。体力が低く馴れていない新人さんには特に多く発生します。運動をした後に吐き気や胸の痛みがする、10分後でも息切れが続いたり脈が1分間に100回以上ある、運動をした日は寝つきが悪い、翌朝目覚めが悪い..などの場合は危険信号。トレーニングや作業のペースを下げるか時間を減らす、休憩を増やすなどの必要があります。
 また、運動と休息と栄養のバランスが重要です。夏ばて対策を参考にして下さい。スポーツマンなら最低8時間は寝るようにし、就寝と起床の時刻を一定に保つことが大事です。

 B適切な服装や帽子を使う
 紫外線対策では、色の濃い服装や帽子、長袖をお勧めしましたが、これも時と場合によりけりです。濃い色は太陽熱も吸収します。ですから、激しいスポーツや作業では、熱をためないよう薄い色と素材を優先させます。
 袖の長さは、半袖がよい場合もあれば、直射日光や炎の赤い光が直接肌にあたる場合は長袖がよい場合も。正しいユニフォームを使っていればまず大丈夫と考えてよいでしょう。

 C応急処置できる準備をしてからスポーツや作業に臨む
 スポーツドリンクか食塩と、薄めたり体を冷やすための水。タオル。氷のうやアイスバッグ。これを冷蔵庫に準備しておくことと、休憩室を確保しておくことは、管理者側の当然の責任です。

★熱中症の応急手当★
 熱中症は、それぞれ病院で行う治療は違いますが、応急手当のポイントは同じです。  すなわち、安静にさせ体を冷やし、水分を補給するのが3原則で、これをいかに早くやるかが生死の分かれ道と言っても過言ではありません。
 ・水分の補給方法は:
  意識があり吐き気はなく、飲める状態なら.. 2倍に薄めた冷たいスポーツドリンク、または冷水500mlに食塩小さじ1杯を入れたものを飲ませる。熱中症のときは、この濃度を厳守。
  飲めないなら..点滴が必要なのですぐに病院へ。
 ・安静にさせて体を冷やす方法は:
  まずすぐにクーラーのきいた部屋か涼しい日陰へ運び服を脱がせる。
  水平に寝かせ、両足を30cm程度挙げる(血流を脳や臓器へ優先させるため)。
  体温が39度以上ならば、氷のうやアイスバッグを首・わき・また・肘や膝の裏など(=大きな血管があり脈がふれる場所)にあてるか、冷水タオルで体を拭いて風をあてつつすぐに病院へ。
  →全身の皮膚をずっと冷やすのは、却って体温コントロールの回復を妨げる。

 ☆次に1つでも当てはまるなら、体を冷やしつつすぐに病院へ☆
・吐き気がある ・意識がもうろうとしている ・言動がおかしい
・体温38℃以上(40℃以上) ・熱があるのに発汗がない

  →特に、赤文字に当てはまるなら熱射病の可能性、集中治療室のある病院へ運ばないと危険。