夏の手紙の時候のあいさつに、「酷暑のみぎり」などという言葉がありますが、決して「しのぎやすい」とは言えない季節です。
梅雨どき〜夜寝苦しくなってくる頃から、お腹は空いてもなんとなく食欲がなく、体がだるい、気力がわかない、疲れやすいなどの症状が出てくる方がいますね。
そして、「暑くて体調を崩す」といえばもう一つ、暑い場所でスポーツや作業などをしていると、気分が悪くなる、めまいがするなどの熱射病や日射病、まとめて熱中症が起きることもあります。
人間には、ハードワークやストレス、気温の変化などの「負荷」に負けずに体調を保つ「自律神経系」というシステムがあります。暑くなり体に熱がたまってくると、自律神経系の指令で皮膚の血管を拡張させて血流量を増やしたり、汗をかくことで体外に熱を放散して体温を調整しています。体温の他、水分と電解質(塩分)の濃度バランスや、血圧、心拍数もコントロールしています。
ところが、いくら自律神経系だけが頑張っていても、あまりに体にかかる負荷が強すぎたり、バランスをとるための水分や電解質、栄養分の補給が足りなければうまくいきません。熱中症も夏ばても、それが原因で起こるという点が共通しています。この2つについて、お話しましょう。
★夏ばて★
夏ばての根本原因はやはり暑さですが、それに伴い生じてくる、
・効きすぎた冷房と室内外の温度差 ・汗をかく ・睡眠不足 ・食欲低下と栄養の偏り
が、直接原因といえるでしょう。その関係を図に示すと、このようになります。
「負荷」に負けないためには、「スタミナ」すなわち神経や筋肉のパワーが要ります。スタミナ食とは、カロリーのある食事というわけではありません。摂取した糖質(炭水化物)や脂肪のエネルギーを、神経や筋肉のパワーに変えるにはビタミンB1が必要です。
ビタミンB1の豊富な食品としては玄米や胚芽米、豚肉やその加工品、海苔、ごまなどが挙げられます。豚肉などが手に入りにくかった時代、精白したお米ばかり食べていた軍人の間で脚気が流行ったのは、ビタミンB1不足でごはんのエネルギーを筋肉のパワーに変えることができなかったからでした。
暑くなると、暑さに負けないためにビタミンB1の消耗が激しくなります。また、ビタミンB群は水に溶けやすく、汗をかくといっしょに出てしまいます。一方、ただでさえ暑さで胃腸の調子も低下しているところに汗をかくと、体内の塩分バランスの崩れにより胃液の分泌が悪くなります。その上、のどが渇くために冷たい物を飲みすぎ、お腹が冷えてふくれ、さらに食欲が低下し栄養不足になりがちです。さらに、夏でも食べやすい物(アイスクリーム、ビール、冷たいめん類など)はいずれも糖質が多いため、代謝にビタミンB1が消費されて、不足に拍車をかけます。ちなみにアルコールの代謝には、糖質以上にビタミンB1を消費します。
以上より、スタミナ不足で疲れやすくなります。
これに蒸し暑い夜の寝苦しさが重なると、睡眠不足で疲労が蓄積して、自律神経系の調節機能がさらに低下します。また効きすぎた冷房で身体を冷やし過ぎても内臓の機能が低下しますし、温度差の激しい室内と屋外を行き来していると、体温調節に自律神経が対応しきれなくなり、変調をきたしてしまいます。どんなに涼しくとも、温度差自体が負荷になってしまうのです。
★夏ばて対策★
@最優先は「睡眠確保」
疲労を蓄積させないためには、何といっても睡眠で回復させることです。
エアコンは絶対にいけないわけではなく、睡眠確保のために上手に使えば夏ばて防止の武器にもなります。睡眠中は体温が下がるので、28℃くらいが適温です。寝苦しさは「蒸し」暑さ、すなわち湿度が問題です。同じ気温でも湿度が高いと、発汗による体温調節の効率が低くなり暑く感じやすいとともに、発汗量も多くなります。冷房ではなく除湿(ドライ)をするだけでかなり違います。また、緩やかな風は不快指数を下げる効果があるので、扇風機でもいいでしょう。ただし、いずれにしても冷風が身体に直接あたるは避けましょう。冷風にあたり続けると身体の表面の熱が奪われ続けることになり、身体は体温をキープするためにフル回転し、かえって身体を疲れさせます。風向きを天井に向け、扇風機は首を振るようにして使い、タイマーで1時間で切れるようにしましょう。
また、ぬるめのお風呂にゆっくり入ると体が休まり、汗をすっきりさせ、自律神経も落ち着くため、よく眠れます。
適度な疲労感も快い睡眠を誘うので、毎日軽い運動をするのもいいでしょう。
Aエアコンは「除湿」を有効活用して外気温との差を小さく
汗のかきすぎや温度差で、余計な負荷を上乗せしないことも大切です。
日中のエアコンは、あくまでこの目的を忘れずに、上手に使いましょう。汗をかく量は、29℃を境に急激に増えます。人間が通常の活動をするのに快適な気温は18〜26℃とされていますが、外気温との差が大きいとそれだけで負荷になりますので、5〜6度以内にするのがポイントです。山口県内の大部分の地域の8月の日中最高気温は31℃、最も暑い岩国と宇部で32℃台。26〜27℃が適温といえるでしょう。湿度が下がれば不快感が和らぐので、除湿を活用すれば温度を下げすぎずに済みます。
B「負荷」に打ち勝つためには、栄養のバランスなど食事に気をつける
冷たい飲み物をとりすぎず、食欲がなくてもきちんと食べることです。そば、そうめん、冷し中華だけでは栄養不足。特にビタミンB1とこれを助けるB2、体調を一定に保つホルモンや免疫物質、酵素の原料となるたんぱく質の3つが大切です。
ビタミンB1の豊富な食品は上に挙げましたが、ビタミンB2の豊富な食品としては背中の青い魚やレバー、干しいたけ、卵、納豆、チーズなどが挙げられます。但し、ものによってはエネルギーやコレステロールの取りすぎに注意して下さい。
なお、サプリメントやドリンク剤には注意して下さい。ビタミンB群にはB1,2,6,12等がありますが、1種類だけ摂りすぎると、他のB群が不足していても一緒に連れて汗や尿に出てしまう性質があります。1種類だけ摂ることは避け、できるだけ多くのB群を含むマルチビタミンタイプを選んで下さい。
そして、B群以外にビタミンCや電解質も汗とともに消耗します。ビタミンCは紫外線対策の面からも大切。新鮮な野菜や果物はビタミンCの他、電解質も適度に含みますので、積極的にとるようにしたいものです。
そして食欲には、見た目や温度も影響します。あまりこってりした感じを出さずに、冷めてもおいしいおかずなら冷やして食べるのもいい方法です。
C熱中症を防ぐためにも、摂るべきときには水分を
日常時も適切に水分をとれば、暑さに負けにくくなります。そのためには、食事の妨げにならないタイミングと、少量を時間をかけて飲むことが大切です。入浴前後、就寝・起床時に、1回に200ml(約コップ一杯)以下を、ゆっくりと飲むようにするとよいでしょう。ただ、夜トイレに起きることが多い方では就寝前は控えます。日常の水分の過不足は、体重と尿の色や回数でチェックできます。薄すぎは夏ばて、濃すぎは熱中症の危険信号と考えましょう。
飲み物の種類は、コーヒーとお酒以外は大抵OKです。但し、カロリーには要注意。スポーツドリンクも、運動時以外ではカロリー源となることを忘れないようにして下さい。糖質のとりすぎはビタミンB群を消費するので逆に疲労の原因になります。また、お茶系のものはカフェインが含まれていますので、就寝前は避けましょう。
飲み物といえど、コーヒー、お酒は利尿作用があるため、逆に脱水傾向となってしまいます。よってこれらを飲むときには、いつも以上の水分摂取を心がけてください。
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